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書評 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」

本の情報

タイトル:世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」

著者:山口 周

出版:光文社

他:新書  2017/7/19発売 257ページ

 

 

どんな本か一言まとめ

なぜ「美意識」なのかを教えてくれる理由

 

おすすめする読者

  • もっと活躍したい中堅社会人
  • これから活躍したい若手社会人
  • もうすぐ働く高校生、大学生

  

本のポイント

  • 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
  • 世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある
  • システムの変化にルールが追い付かない

 

解説と感想

論理的・理性的な情報処理スキルの限界

論理的・理性的な情報処理スキルは、

①正解のコモディディ化

②方法論としての限界

だと著者は述べる。

 

まず、①は論理や理論は誰もが同じような正解となり、ありふれた内容となるということ。

そして、②は変化が激しく正解がわかりにくい今の世の中では、論理や理性で100%正解の考えは生まれず、意思決定(責任者が方向性などを決めること)できない。今の日本企業に多い問題である。

 

これに対応するために、全体を直感的に捉える感性と、美意識による構想力や創造力が求められると著者は述べている。

 

これは、論理的な考えを捨てろということではなく、スタートが感性や美意識だといっているのだと思う。例えば、「おもしろい」「ワクワクする」だとか、頭の中に「良いイメージがある」とか、なんとなくだが私もそういう経験はある。

 

そして、論理や理性というのは、著者が言うように”もう出尽くしている”のもそうだし、これからAI(人工知能)が発達すれば、ますますそういった状況になるのだと思う。ということは、”人間にしかできない”ことというのは、こういう感性や美意識なのかもしれない。

 

 

世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある

世界中で経済成長がすすみ、世界中が「自己実現欲求」の市場になっていると著者は言う。なお、世界の経済成長とマズローの欲求5段階説は過去のブログで詳しく述べているため、ご参照のこと。

 

「世界の経済成長」

書評 FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 - ビジネス本の書評ブログ

 

マズローの欲求5段階説」

HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント 書評 - ビジネス本の書評ブログ

 

そして、この市場に対するには、マーケティングスキルで論理的に機能や価格を考えるよりも、人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要だと著者は述べる。

 

自己実現欲求は、自分を高めるために頑張るというすごい感情なだけではなくて、「おもしろい」とか「感動したい」とか「かっこいい・かわいい」というような欲求も含まれると思う。もちろん個人差があるだろうが、多かれ少なかれ、これらの欲求にお金を使う人は多いのではないだろうか。これらの欲求には論理とか理性などはおそらくない。

そして、作り手の感性や美意識が詰まっているから、私たちに思いが届き、「ワクワク」させてくれるのだろう。

 

システムの変化に法律が追い付かない

 

これはグレーゾーン(法を犯してはいないが、モラル的にどうなの?という内容)を攻めて荒稼ぎした企業は、法が追い付いたり世間から批判を浴び、最後にしっぺ返しを受けると実例をもとに著者は説明している。

そして、それを防ぐのは自分の中の美意識に従うことだと述べる。そして、逆の言い方で、美意識を持たないビジネスは厳しい局面を迎えると警告している。

 

これは感覚的に分かりやすい内容ではないだろうか。事業や仕事も人間と同じで、「悪いことはするな」ということだ。まさに、なんとなくおかしいと思いながら、”ルールはセーフ”、”他の人もやっている”などで、やってしまう。ちょっと後ろめたいけど、やってしまう。そんな経験をしている人が多いのではないだろうか。

また、”自分の会社の常識は、他の会社の非常識”という言葉も著者は述べる。これを防ぐにも自分の美意識しかないという。これは気を付けないと、自分もそうだったということがあるかもしれないので、決してひとごとではない。

 

まとめ

本書のタイトルに「エリートは」とあるが、これは全員に当てはまると思う。仕事をするのは経営者や責任者だけではないし、他人とかかわらない仕事はないからだ。そして、一人ひとりが美意識を貫いて仕事をすれば、必ずその人にしかできない仕事となり、まわりに感動を生む。私はそう思う。そして何より「ワクワク」できると思う。ただでさえ、大変でつらいことが多い仕事なのだから、少しでも「ワクワク」して仕事をできるのは幸せなのではないだろうか。