天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ 書評
本の情報
タイトル:天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ
著者:北野 唯我
出版:日本経済新聞出版社 単行本(ソフトカバー) – 2019/1/17
272ページ
どんな本か一言まとめ
「天才」「秀才」「凡人」とはなにか、なぜ天才が殺されるか
おすすめする読者
- 20~30代の社会人
- 中学生、高校生、大学生
本のポイント
- 天才・秀才・凡人とはなにか
- 天才が殺される理由
- それぞれの人の中に天才がいる
解説と感想
天才・秀才・凡人とはなにか
著者は、人間は以下の3タイプがいるといっています。
1.天才:「創造性」
- 独創的な考えや着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる。
- 秀才に興味がなく、凡人に本当は理解してほしい気持ちがある
- 数はかなり少ない
2.秀才:「再現性」
- 論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人
- 天才に妬みと憧れを持ち、凡人を心の中で見下している
- 数は少ない
3.凡人:「共感性」
- 感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人
- 天才を理解できないから排斥し、秀才を天才だと勘違いしている
- 数はかなり多い
それぞれのタイプは基本的にはお互いの価値観や世界観を理解・共有することができない
会社や学校のまわりの人たちを思い浮かべると、特徴も数もなんとなくわかるような気がしますね。
本書の主人公は凡人ですが、ある天才の社長に惚れ込んで、社長とともに創業から立ち上げたメンバーという設定ですが、私はそこまで惚れ込んだ天才とは出会ったことはありません。それほど数が少ないということでしょう。考えてみれば当たり前ですが。
そして、秀才は数人思い浮かびます。数には納得です。
最後の凡人は、空気を読みながら生きる、天才・秀才以外の人間というイメージなのかなと思います。天才や秀才と比べるとなんとなく私自身はイメージしにくいですが、大多数の人はそうでであることはわかります。
天才が殺される理由
天才を理解できずに排斥(受け入れられずに拒むこと)する凡人と、天才への妬みが強い秀才が、天才を殺すと著者は述べています。また、天才への憧れが強い秀才は天才の右腕となるが、妬みが強いと最大の敵になるとも言っています。そして殺された天才は凡人となってしまうことが多いそうです。
これもイメージがつきやすいというか、実際にそのような体験を私自身もしていると思います。学校でも会社でも。人間の性質なのでしょうね。
天才も人間ですから、最大の敵である秀才か、大多数の凡人から拒まれれば、自分はおかしいのかなと思ってしまいますよね。殺されて組織に残るか、組織を去るかのどちらかになってしまうのでしょうね。本当に悲しいことです。
以上のことが「大企業でイノベーションが起きない理由」だとも著者は言っています。
*イノベーションとは、簡単に言うと「新しい良いモノや仕組み、そしてそれを創りだすこと」です。
それぞれの人の中に天才がいる
「天才」「秀才」「凡人」のタイプに分かれるが、全ての人がそれぞれをあわせもっている。だれもが天才の部分を多かれ少なかれ持っているが、同じくあわせもっている秀才と凡人の部分が、知らず知らずのうちに天才に蓋をして、自分の可能性を閉じ込めている。それは特に学校がそうであり、先生でさえ善意の行動で天才を殺していると述べています。
学校では他の人と違う変な部分は恥ずかしかったり、いじめられるのではないかと怖くなったりしたことは私にもありますし、ほとんどの人が経験したことがあるのではないでしょうか。何より、無意識に自分には天才の部分がないと思い込んでることがもったいないと感じます。「創造性」って難しい、とてもすごいことのような言葉ですが、たぶんそうではなくて、「こんなことがあったら面白いな、こんなことをやってみたら面白いんじゃないか」っていうのが創造性であって、自分にしかない天才の部分なのかもしれません。そう考えるとちょっとだけ前に進めそうな、進んでみようと思えるかもしれません。
まとめ
「天才」「秀才」「凡人」という考え方で自分を含めた人間に対して新しい考え方や気づきを与えてくれる本だと思います。「本のポイント」には挙げていませんが、印象的だった表現が2つありました。それは登場人物の天才が「最大のアートは宇宙だ。価値観はすべて相対的だと気づける」というシーンと、「革新的なイノベーションは、天才の飽きに近い感情から生まれる」という言葉です。こういう本筋から外れたようなところに、著者の人柄・技術・伝えたいことが表れているように気がします。
良い本と出合えました。みなさんも是非読んでみてはいかがでしょうか。