書評 一流のリーダーほど、しゃべらない
本の情報
タイトル:一流のリーダーほど、しゃべらない
著者:桜井 一紀
出版:すばる舎
他:単行本 2017/8/18発売 224ページ
どんな本か一言まとめ
リーダーは自分が話す内容を変えることで部下を育てるという「コーチング」について教えてくれる本
おすすめする読者
- 部下を持つリーダーや管理職
- これからリーダーや管理職になるのが近い若手
本のポイント
- リーダーは「今」話していることを減らし、部下の話を聞く
- リーダーは部下一人ひとりと、部下本人の話をする
解説と感想
リーダーは「今」話していることを減らし、部下の話を聞く
リーダーは、部下に”教えすぎ”であり、部下の話を聞くことが少ないと著者は言う。その結果、部下は「教えられるのを待ち、受け身で考えない人」になり、育たないと述べる。なお、日本は世界的にみてもそういうリーダーが多く、仕事ができるリーダーほど教えすぎであるようだ。
また、リーダーとは話すことではなく、部下の話を聞き、部下に「考えさせる」ことで、部下は受け身ではなく自分から考え、「こうしたい」という発想や意欲がわき育っていくと著者は言う。
楽しい仕事や達成感が多かった仕事を思い浮かべると、上司が仕事をまかせてくれて、相談にもポジティブに返してくれて、成功という結果が出た時もそうだし、その仕事のプロセスも大変だけど楽しかったという経験がある。それは、私の上司が、私の話を”聞いてくれて”、”私自身に考えさせて”、”後押しをしてくれた”からだと思う。
上司は会社から与えられた仕事や成果に責任を負う。私が成果を出せなかったとしたら、責任を負わなければならない。そんなプレッシャーの中、私に任せてくれたことに関して、感謝の気持ちでいっぱいだ。もちろん、失敗の可能性を下げるために、上司は見守っていてくれたのだろうし、フォローをしてくれていたのだと思う。私は上司という立場ではないが、そんな上司になりたいと思う。もちろん、逆に嫌な思いをした上司もいる。若い時に感じたその嫌な思いを、未来の部下にさせたくないという気持ちも忘れない。そしてそれを実行したい。この本でそう思わされた。
リーダーは部下一人ひとりと、部下本人の話をする
リーダーが部下一人ひとりと1対1で、定期的に部下本人の話をすることで、部下はどんどんやる気になると著者はいう。部下本人の話というのは、主語が「業務や仕事」ではなく、部下が主語である「あなたががんばっていること」「あなたがやりたい仕事」という内容である。
これは当たり前のようで実践するのは難しいのだと思う。難しいからこそ、できている人が少なく、効果が高いのだろう。具体的には、そもそも上司は忙しく、1対1で定期的に部下と話す時間を作ること、部下をしっかり見てないと話ができないこと、聞き役に徹して部下に考えさせるということは、会話に時間もかかるし、部下が答えを出すのにも時間がかかるということが想像できる。著者が言っているが、話すより聞くほうがエネルギーが必要だということだ。本当に上司は大変だ。
だが、それだけ部下を育てるということが重要であり、上司にしかできないことであり、それがとてつもないパワーやエネルギーを生んで、成果が生まれるということなのだろう。部下が育つまで時間がかかるだろうから、長期的なビジョンが必要だし、部下がどうやったら輝くのかという、もはや半分親のような感覚が大事なのだろう。昔は会社は家族だと言ったらしいが、それも分からなくはないと思える。
まとめ
上司は”話しすぎ=教えすぎ”であり、部下の話をもっと聞き、部下自身の話を定期的にしてあげる。それが部下の成長や意欲につながり、覇気のある良い組織や仕事につながるという内容だった。また、著者は「硬直してしまった関係も必ず変えられる」とも述べている。急に話を聞いてくれるようになって上司が不気味だと陰で言われながらも、実際評価しているという部下の事例を交えながら説明している。「今さら変えるのは無理だ」という人が多いのかもしれない。でも、その勇気をもらえる言葉を信じて、少しでもいいから話し方、聞き方を変えてみる。そんなきっかけとなってもらえれば幸いである。
書評 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」
本の情報
タイトル:世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」
著者:山口 周
出版:光文社
他:新書 2017/7/19発売 257ページ
どんな本か一言まとめ
なぜ「美意識」なのかを教えてくれる理由
おすすめする読者
- もっと活躍したい中堅社会人
- これから活躍したい若手社会人
- もうすぐ働く高校生、大学生
本のポイント
- 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
- 世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある
- システムの変化にルールが追い付かない
解説と感想
論理的・理性的な情報処理スキルの限界
論理的・理性的な情報処理スキルは、
①正解のコモディディ化
②方法論としての限界
だと著者は述べる。
まず、①は論理や理論は誰もが同じような正解となり、ありふれた内容となるということ。
そして、②は変化が激しく正解がわかりにくい今の世の中では、論理や理性で100%正解の考えは生まれず、意思決定(責任者が方向性などを決めること)できない。今の日本企業に多い問題である。
これに対応するために、全体を直感的に捉える感性と、美意識による構想力や創造力が求められると著者は述べている。
これは、論理的な考えを捨てろということではなく、スタートが感性や美意識だといっているのだと思う。例えば、「おもしろい」「ワクワクする」だとか、頭の中に「良いイメージがある」とか、なんとなくだが私もそういう経験はある。
そして、論理や理性というのは、著者が言うように”もう出尽くしている”のもそうだし、これからAI(人工知能)が発達すれば、ますますそういった状況になるのだと思う。ということは、”人間にしかできない”ことというのは、こういう感性や美意識なのかもしれない。
世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある
世界中で経済成長がすすみ、世界中が「自己実現欲求」の市場になっていると著者は言う。なお、世界の経済成長とマズローの欲求5段階説は過去のブログで詳しく述べているため、ご参照のこと。
「世界の経済成長」
書評 FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 - ビジネス本の書評ブログ
「マズローの欲求5段階説」
HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント 書評 - ビジネス本の書評ブログ
そして、この市場に対するには、マーケティングスキルで論理的に機能や価格を考えるよりも、人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要だと著者は述べる。
自己実現欲求は、自分を高めるために頑張るというすごい感情なだけではなくて、「おもしろい」とか「感動したい」とか「かっこいい・かわいい」というような欲求も含まれると思う。もちろん個人差があるだろうが、多かれ少なかれ、これらの欲求にお金を使う人は多いのではないだろうか。これらの欲求には論理とか理性などはおそらくない。
そして、作り手の感性や美意識が詰まっているから、私たちに思いが届き、「ワクワク」させてくれるのだろう。
システムの変化に法律が追い付かない
これはグレーゾーン(法を犯してはいないが、モラル的にどうなの?という内容)を攻めて荒稼ぎした企業は、法が追い付いたり世間から批判を浴び、最後にしっぺ返しを受けると実例をもとに著者は説明している。
そして、それを防ぐのは自分の中の美意識に従うことだと述べる。そして、逆の言い方で、美意識を持たないビジネスは厳しい局面を迎えると警告している。
これは感覚的に分かりやすい内容ではないだろうか。事業や仕事も人間と同じで、「悪いことはするな」ということだ。まさに、なんとなくおかしいと思いながら、”ルールはセーフ”、”他の人もやっている”などで、やってしまう。ちょっと後ろめたいけど、やってしまう。そんな経験をしている人が多いのではないだろうか。
また、”自分の会社の常識は、他の会社の非常識”という言葉も著者は述べる。これを防ぐにも自分の美意識しかないという。これは気を付けないと、自分もそうだったということがあるかもしれないので、決してひとごとではない。
まとめ
本書のタイトルに「エリートは」とあるが、これは全員に当てはまると思う。仕事をするのは経営者や責任者だけではないし、他人とかかわらない仕事はないからだ。そして、一人ひとりが美意識を貫いて仕事をすれば、必ずその人にしかできない仕事となり、まわりに感動を生む。私はそう思う。そして何より「ワクワク」できると思う。ただでさえ、大変でつらいことが多い仕事なのだから、少しでも「ワクワク」して仕事をできるのは幸せなのではないだろうか。
書評 「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか
本の情報
タイトル:「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか
著者:遠藤誉
出版:PHP研究所
他:単行本 2018/12/22発売 256ページ
どんな本か一言まとめ
中国の国家戦略を「大きな視点」と「詳細な視点」で教えてくれる本
おすすめする読者
- 中国の今とこれからについて、「大まかに」知りたい人
- 中国の今までとこれからについて、「詳細に」知りたい人
本のポイント
- 「中国製造2025」の戦略1:ハイテク製品戦略
- 「中国製造2025」の戦略2:宇宙戦略「一対一路一天一空」
解説と感想
「中国製造2025」の戦略1:ハイテク製品戦略
中国は2015年に「中国製造2025」(以下2025)を国家戦略とした。まず1つ目の戦略として、2025年までに、ハイテク製品のコアとなる構成部品(主に半導体)を全世界の70%を中国製とし、製品を自給自足するというものだと著者は述べている。
ではなぜ、ハイテク製品なのか。その理由は、
①反政府運動の抑止
②宇宙戦略への足がかり
である。
①の経緯は、簡単に説明すると以下の流れになる。(②は次で詳しく触れる)
- 2012年まで日本と中国が自分の領土だとお互いに出張
- 2012年に尖閣諸島を日本が国有化
- 中国で半日デモが起き、日本製品不買運動が起きた
- スマホやパソコンの重要な部品である半導体の多くが日本製だと中国国民が気づく
- 日本製品不買といってもスマホは捨てられない
- 最終的には「半導体を作る技術もない国に追いやった」と不満が政府に向く
- 2013年に製造強国戦略研究に着手し、「2025」の発表に至る
ハイテク戦略にいたる原因が日本人としては「なんともいえない」感じだ。そもそもいきなり勝手に中国が尖閣諸島は「自分のモノだ」と言い出し、尖閣諸島に勝手に船をだし、トラブルを続出させたから、日本が正式に国有化したという流れが、まさかこういう展開になるとは。ただ、それでも中国のハイテク企業の成長はめざましく、世界の半導体企業のトップ10に2社入っているまでである。身近な例でいえばファーウェイだろう。携帯ショップにいけばファーウェイ製のスマホを見かけるだろう。中国の国家戦略がどれだけ強力なものか実感できるのはないだろうか。
「中国製造2025」の戦略2:宇宙戦略「一対一路一天一空」
次に「2025」の宇宙戦略「一対一路一天一空」とはどういうものなのか。要約すると著者はこう述べる。
これは私の持論だが、中国はこれから伸びるであろう宇宙ビジネスに対して、これから成長していく多くの発展途上国に投資する形で人工衛星を打ち上げ、インフラを牛耳ろうとしているのだと思う。暗号を制するというのは戦争的な意味合いが強いのだろうが、世界の中で国の発言権や影響力を強めるという意味合いがあるのだろう。
まとめ
著者はこの2つの戦略がアメリカを脅かすものであり、だからこそアメリカは米中貿易戦争を起こしたと言っている。そして、中国はハイテクと宇宙により世界を制覇しようとしており、言論を弾圧するような中国が世界を制したら、どのような明日が待っているかと、危険性を語っている。
なお、全部で5章からなる内容は「2025」にかかわる詳細は詰め込まれており、かなり読み応えのある内容となっている。興味を持っていただいた方は、ぜひ読んでいただければ幸いだ。
書評 潜在能力を最高に引き出す法: ビッグ・ポテンシャル 人を成功させ、自分の利益も最大にする5つの種
本の情報
タイトル:潜在能力を最高に引き出す法: ビッグ・ポテンシャル 人を成功させ、自分の利益も最大にする5つの種
著者:ショーン・エイカー (著)、高橋由紀子 (訳)
出版:徳間書店
他:単行本 2018/12/22発売 280ページ
どんな本か一言まとめ
自分の能力を引き出し、成果を高める方法を教えてくれる本
おすすめする読者
- 社会人
- 学生
本のポイント
- 限定ポテンシャルと最大ポテンシャル
- ポジティブな影響を高める
- ネガティブな影響を弱める
解説と感想
限定ポテンシャルと最大ポテンシャル
著者はポテンシャル(能力)を高め、成果を高めるためには、自分ひとりではなく、チームで活動することだとはじめに述べている。詳しくは、
- 限定ポテンシャル:自分1人で達成する限定的な小さい成功
- 最大ポテンシャル:他者との間に生じる好循環によってのみ達成可能な大きい成功
*最大ポテンシャル=個人の特性×(ポジティブな影響ーネガティブな影響)
と表現している。
また、学生時代は個人の成績だけが全てであり、社会に出るとむしろ自分1人だけではなく、チームで成果を求められる矛盾についても述べている。
シンプルな内容だ。当たり前だと思う方もいるだろう。だが、当たり前でシンプルだからこそ、”チームで最大の結果を出すためにやるべきことをやっているか”ということを、100%実現できている人は少ないのではないだろうか。これは、この”チーム活動”だけに限ったことではないが、”当たり前”や”シンプル”というのは、私は最強の武器であると思っている。最も強く、100%使いこなすのは難しく、最大限に努力しなければならない。これが私の持論だ。
ポジティブな影響を高める
まず、最大ポテンシャルを高めるためには、”ポジティブ(良い)な影響”を高めることが重要だと著者は言っている。具体的には、
- 最大の競争優位性を有するのは、ポジティブで意欲のある脳だ
- 会うといい気分になる人、力を与えられる人、意欲が湧いてくる人に3つあてはまる5人とよく付き合う
- 人をほめ、そしてそれと同じくらいに、自分をほめること
- 会話はポジティブな言葉ではじめる
という方法だ。
ポジティブとは良い影響であったり、楽観性(悪いほうではなく良いほうに考えること)ともいえる。当たり前だがやはり重要だ。みなさんも普段の仕事や生活でも簡単に思い浮かぶ内容だろうし、親や学校から当たり前に教わったことだと思う。しかし、私自身もそうだが、100%できているとは、なかなか言えることではないと思う。仕事や生活が100%良いことだけではないからだ。
だが、それを乗り越えて、ポジティブに考え、ポジティブに行動し、まわりにポジティブを分けてあげる。そして、ポジティブな人と付き合うことで、ポジティブを分けてもらう。この当たり前で大事な行動を、昨日よりも今日、今日よりも明日、”ちょっとだけ増やしてみる”、そして”続けてみる”といった積み重ねが自分をよりよく変えていくのだと思う。
ネガティブな影響を弱める
次に、最大ポテンシャルを高めるためには、”ネガティブ(悪い)な影響”を弱めることだと著者は言っている。具体的には、
- 喜びの反対は悲しみではなく無気力
- 職場における不安のほぼ90%は、わずか5%の、エネルギーを吸い取る人々が生み出している
- 1人の有害な人間は、1人のとりわけ優れた人間よりも、大きな影響をチームにもたらす
- 楽観性を準備しておく:嫌なことがあった日は、24時間以内に起きたいいことを3つ考える
と述べている。
これも実際の体験や経験からとっつきやすいのではないだろうか。ネガティブはポジティブよりも強く影響が働くところや、ポジティブなことよりネガティブなことのほうが思いつきやすく、心の残るところから、まさに”やっかいもの”といえるだろう。そして、これも普段の生活の中で、自分自身やまわりで当たり前のように”存在している”と思う。絶対にゼロではない。
繰り返しになるが、ネガティブな考えや行動をやめ、まわりにネガティブを分けさせない。そして、ネガティブな人と付き合わないことで、ネガティブを分けてもらわない。これは、ネガティブな考えや行動をやめることで、自然とネガティブな人が近寄ってこないという効果もあるかもしれない。そして、これを積み重ねることが何より大事なのだと思う。
まとめ
仕事はチーム活動。ポジティブに徹する。このシンプルさをしっかり伝えてくれた本だ。仕事や学校で、ここを意識するだけで、自分の見えてくる世界観やいろどりのようなものが、大きく変わるのかもしれない。それを学ばせてくれた本でもある。基本や初心に立ち返るきっかけにもなるはずだ。ぜひみなさんにも読んでいただきたい本だ。
書評 FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
本の情報
タイトル:FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
著者:ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、 他
出版:日経BP社
他:単行本 日経BP社発売 400ページ
どんな本か一言まとめ
本能による悪い思い込みとその対策に加え、私たちがいかに世界を知らないかを教えてくれる本
おすすめする読者
- 社会人
- 小学生高学年以上の学生
- 高齢者
本のポイント
- 世界を誤って認識する原因
解説と感想
世界を誤って認識する原因
ほとんどの人が世界を誤って認識している。
本書より13個のクイズを取り上げる。あなたはどれだけ世界を理解できているだろうか。なお、正解率はほとんどの国が、あてずっぽうの33%より低い結果になっている。(クイズ⑬は例外)
①現在、低所得国に暮らす女子が初等教育を修了する割合は?
A 20% B 40% C 60%
②世界で最も多くの人が住んでいるのは?
A 低所得国 B 中所得国 C高所得国
③世界で極度の貧困にある人の割合は、20年でどう変わったか?
A 約2倍 B ほぼ変化なし C 半分
④世界の平均寿命はおよそ何歳か?
A 50歳 B 60歳 C 70歳
⑤15歳未満の子供は現在世界に20億人いる。2100年には約何人になるか?
A 40憶人 B 30億人 C 20億人
⑥2100年には人口は今より40億人増える予測だが、人口が最も増える年齢層は?
A 子供(~15歳) B 大人(15~74歳) C 後期高齢者(75歳~)
⑦自然災害で毎年亡くなる人数は、この100年でどう変化したか?
A 2倍以上 B ほぼ変化なし C 半分以下
⑧現在世界には約70憶人の人がいるが、正しい人口分布はどれか
A アジア 40億 ヨーロッパ10憶 アフリカ10億 アメリカ南北10憶
B アジア 30億 ヨーロッパ10憶 アフリカ20億 アメリカ南北10憶
C アジア 30億 ヨーロッパ10憶 アフリカ10億 アメリカ南北20憶
⑨世界の1歳児が、何らかの病気に対する予防接種をどのくらい受けているか?
A 20% B 50% C 80%
⑩世界の30歳男性は、平均10年の学校教育を受けている。30歳は女性はどうか?
A 9年 B 6年 C 3年
⑪1996年にトラ、ジャイアントパンダ、クロサイが絶滅危惧種となったが、当時よりも絶滅の危機に瀕している動物の数は?
A 2 B 1 C 0
⑫世界でいくらかでも電気が使える人は?
A 20% B 50% C 80%
⑬これから100年で地球の平均気温はどうなると考えられているか?
A 暖かくなる B 変わらない C 寒くなる
答え*1
なぜ誤って認識してしまうか、本書から以下の通り要約して紹介する。なお、関連するクイズも参考に記す。
分断本能:世界は分断されているという重み込み(クイズ①②)
ネガティブ本能:世界はどんどん悪くなっているという思い込み(クイズ③④)
直線本能:世界の人口はひたすら増え続けるという思い込み(クイズ⑤⑥)
恐怖本能:危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み(クイズ⑦)
過大視本能:目の前の数字がいちばん重要だという思い込み(クイズ⑧)
パターン化本能:ひとつの例がすべてに当てはまるという思い込み(クイズ⑩)
宿命本能:すべてはあらかじめ決まっているという思い込み(クイズ⑩)
単純化本能:世界はひとつの切り口で理解できるという思い込み(クイズ⑪)
犯人捜し本能:誰かを責めれば物事は解決するという思い込み(クイズ⑫)
焦り本能:今すぐ手を打たないと大変なことになるという思い込み(クイズ⑬)
まとめ
自分が世界についていかに知らないか驚かされる。また、最後の章では「教育」「ビジネス」「ジャーナリスト」等の区切りで、正しく世界を認識し、どう行動すべきかを著者は教えてくれている。世界を誤って認識してしまう理由を紹介したが、実際の世界はどうなっていて、私たちはどのように対策すればよいかはぜひ本書を読んでほしい。これからの世界の見方が変わるはずだ。
*1:①C ②B ③C ④C ⑤C ⑥B ⑦C ⑧A ⑨C ⑩A ⑪C ⑫C ⑬A
FINISH! 必ず最後までやり切る人になる最強の方法 書評
本の情報
タイトル:FINISH! 必ず最後までやり切る人になる最強の方法
著者:ジョン・エイカフ、花塚 恵 (訳)
出版:ダイヤモンド社
他:単行本(ソフトカバー) 2019/2/28発売 304ページ
どんな本か一言まとめ
目標を達成するために、「完璧主義」とどう戦うかを斬新で痛快に教えてくれる本
おすすめする読者
- 目標を途中であきらめることが多く、それを直したい人
- 目標をもう少し楽に達成することに興味がある人
本のポイント
- 人は「完璧が崩れた翌日」に挫折する
- 目標を半分にする
- 何をやらないかを決める
- 目標を達成するために重要なデータの測定対象を決める
解説と感想
人は「完璧が崩れた翌日」に挫折する
まず、著者は目標をやりきらないための最大の敵は「完璧主義」だと言っている。そして、完璧が崩れた翌日に挫折すると著者はシンプルにまとめている。
これはまさに「あるある」ではないか。翌日だけではなく、決めた目標をできなかったり、さぼったりした「その日」だったり、「段々やる気が少なくなって」いつの間にか、頑張らない日が増えていく。私にはこういう経験が多い。みなさんもそういう経験がひとつやふたつあるのでは?
また、これに対する考えとして、完璧主義の反対は「やりきること」。つまり不完全ながらも前に進むことが大事で、またやり直せばいいだけの話だ。と著者はまとめている。
これは勇気をくれる内容だ。目標までやりきれない日があっても、さぼった日があってもいい。また明日頑張ろう。くらいの軽い気持ちでいいと励ましてくれているようだ。
目標を半分にする
完璧主義は、目標を特大サイズにしようとする。その対策として「目標を半分にする」か「時間を倍」にすることを著者は勧めている。そして、目標を半分にすることで、目標が達成しやすくなり、これからも頑張ろうと思えるとのことだ。そして半分の目標が達成できたら、目標が大きすぎたかどうかを振り返ることが大事だと述べている。
これは痛快だ。読んでいて斬新な発想に思わず笑ってしまった。本当に完璧主義は「悪いヤツ」で、無意識に目標を大きく設定している。私にも何度も経験がある。誰にでもすぐにできる目標の作り方だと思う。シンプルで素晴らしい。
何をやらないかを決める
やろうとすることが多すぎて、何かひとつでもうまくいかなかったときに、すべての目標をあきらめてしまう。だから何をやらないか、または手抜きするかを事前に決めることが大事だと著者は言っている。
これも完璧主義が悪さをしているのだろう。悲しいことに私はこれにも何度も経験がある。「半分にする」というのもそうだが、無意識に大きくなってしまう目標を、意識して減らしてあげるという発想はあるようでなかった考えだと感じる。
また、「仕事の目標を半分にする」というのは基本的には難しいのが普通だ。では、完璧主義につぶされずに仕事の目標を達成するためには、「やらないことを決める」ことは有効な方法だと思う。
目標を達成するために重要なデータの測定対象を決める
目標を達成するために重要なデータの測定対象を1~3つ決めること。ただし30個にならないよう完璧主義に気を付けること。そして、データを測定することで、新たな目標を設定するときに過去のデータが参考となったり、現在の目標に対する進捗の度合いが分かり、目標や行動に修正が必要かが分かると著者は言っている。なお、完璧主義は感覚を好むがデータを嫌うとのことだ。
目標を達成するために、データの測定対象を決めるというのは、当たり前といえば当たり前だし、意外と出来ていなかったり、それを知らない人も多いような印象がある。当然、そこまでするのが単純に面倒だということもあるだろう。面倒そうだが、やってみたほうが実は楽だったという、意外性がありそうな手法なのかもしれない。
また、これも「仕事の目標を半分にする」ために有効な方法だと思う。
まとめ
この本の最大のテーマで、最大の敵である「完璧主義」の表現が斬新で面白い内容だ。みなさんの中にも思い当たる「完璧主義」がきっとたくさんあるだろう。そして、こんなに手軽な方法と考え方で「完璧主義」を撃退できるのかというのが痛快で楽しい内容だ。目標を達成させる心構えは、そんなにまじめに、重く考えなくていいんだよ、と励ましてくれる本でもある。みなさんに少しでも興味がわいていただけたなら幸いだ。
別冊NHK100分de名著 読書の学校 池上彰 特別授業 『君たちはどう生きるか』 書評
本の情報
タイトル:別冊NHK100分de名著 読書の学校 池上彰 特別授業 『君たちはどう生きるか』
著者:池上 彰
出版:NHK出版
他:ムック 2017/11/25 120ページ
作者:吉野源三郎 1937年刊行
どんな本か一言まとめ
池上彰氏が高校生・中学生に行った特別授業を通じて、「どう生きるか」考えてほしいと投げかける本
おすすめする読者
- 少しでも「よりよく生きたい」と考える全ての人
本のポイント
- 豊かさ
- 友だち
- どう生きるか
解説と感想
豊かさ
本書でとりあげたこの部分が印象的だ。
学校や世間で立派なことだと教わったことを、教えられたとおりに生きていこうとするなら、一人前にはなれない。君自身が心から感じたことや、しみじみと心を動かされたことを、大切にしなくてはいけない。
生み出してくれる人がなかったら、それを味わったり、楽しんだりして消費することは出来やしない。生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ。
会社でも学校でも「上司や先輩や友達はみんなやっている」から、やるのか? それは自分がやりたいことなのか? 心の痛みはないか? 自分を誇れるのか? 生きるとは、豊かさとは?
私は本書を読んでいて、ふと自問自答した。私は、きっと堂々と胸をはれるほど自分を誇ることはできない。そんな人が多いのではないだろうか。
勉強ができる、仕事ができる、お金がある、お金を使って楽しむ。それも大事だろう。
ただ、本当に心に「豊かさ」を感じているのか。毎日毎日を誠心誠意、魂をぶつけて、生きているか。そんなことを考えさせられた。
友だち
著者の池上氏は授業の中で中学生に以下のように述べている。
「先輩に殴られるなら、一緒に殴られよう」と3人の友達が語り合うエピソードがあった。極端な例だが、友達だちがつらい思いや苦しい思いをしているときに、あなたならどうするか。受験競争が激しくなり、同級生が体調を崩したりしたときに、内心ではほっとしたり、チャンスかもしれないと考えたり。そういう自分の心の悪魔とどう戦うか。
友だちに限らず、「この人のためなら大変な目にあってもかまわない」と思える存在は、生きていくうえで大きな意味や価値を持つ。
そしてその後、物語の主人公は、他の友人2人が友だちを守ろうと立ちはだかったのに、勇気を出せず、震えて飛び出すことができなかった。主人公は大きく悔やんだが、謝罪の手紙を出し、元の仲の良い関係に戻ることができた。どんな過ちや苦しい経験も、その後の生活に生かせれば無駄にはならない。大切なのは、自分が犯した過ちときちんと向き合い、自分はどうすべきだったかということを考えて、心に刻むこと。
これは、大人になるほどできなくなっていくものかもしれない。「自分は仕事で忙しい」、「面倒ごとに巻き込まれる」から「仕方なく」同僚や仲間を助けられない。
「あいつが悪い」「仕方がなかった」と自分を正当化し、愚痴りながら酒を飲む。
いつしか、自分の過ちを過ちとも思わず、向き合うこともなくなり、向き合うときのあの苦しい大事な感覚を忘れていく。こういった積み重ねが「人間らしさ」をなくしていくのかもしれない。
どう生きるか
「君たちはどう生きるか」の作品内で、池上氏は以下をとりあげている。
英雄とか偉人とか言われている人々の中で、 本当に尊敬ができるのは、人類の進歩に役立った人だけだ。そして、彼らの非凡な事業のうち、真に値打ちのあるものは、ただこの流れに沿って行われた事業だけだ。
*上の内容は、ナポレオンの英雄的エピソードと、ロシア遠征での約60万人の兵を死なせたことを踏まえている
良い心がけをもっていながら、弱いばかりにその心がけを生かしきれないでいる、小さな善人がどんなに多いか。世間には、悪い人ではないが、弱いばかりに、自分にも他人にも余計な不幸を招いている人が決して少なくない。人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気はくを欠いた善良さも、同じように空しいことが多い。
80年前から何も変わっていない。紛争がなくならない世界情勢と、「小さな善人」。大なり小なり、私もあなたも「小さな善人」であろう。「生き方」、そして「どう生きるか」。こんな複雑な世界だからこそ、自分自身にこのテーマを追求していきたい。
まとめ
著者の池上氏は「歴史」と「本を読むこと」で「ぜひ考えてほしい」と強調している。「いま」を考えるうえで、本質を理解するには、「背景の歴史」を知ることが大切である。また、本を読むことは「答えを知ること」ではなく、「自分で考えてみる時間をとる」ことが大事だと述べている。
これは「君たちはどう生きるか」の最大のテーマであり、私たちはずっとそれを探し続け、苦しみながらも実践していくのだと思う。そして、その積み重ねこそがまさに「生きている」ことなのだと思う。
今からでも遅くはない。年齢なんて関係ない。毎日毎日を誇れるように、少しずつでも「生きて」いく。そんな勇気をくれる本だと思う。