書評 「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか
本の情報
タイトル:「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか
著者:遠藤誉
出版:PHP研究所
他:単行本 2018/12/22発売 256ページ
どんな本か一言まとめ
中国の国家戦略を「大きな視点」と「詳細な視点」で教えてくれる本
おすすめする読者
- 中国の今とこれからについて、「大まかに」知りたい人
- 中国の今までとこれからについて、「詳細に」知りたい人
本のポイント
- 「中国製造2025」の戦略1:ハイテク製品戦略
- 「中国製造2025」の戦略2:宇宙戦略「一対一路一天一空」
解説と感想
「中国製造2025」の戦略1:ハイテク製品戦略
中国は2015年に「中国製造2025」(以下2025)を国家戦略とした。まず1つ目の戦略として、2025年までに、ハイテク製品のコアとなる構成部品(主に半導体)を全世界の70%を中国製とし、製品を自給自足するというものだと著者は述べている。
ではなぜ、ハイテク製品なのか。その理由は、
①反政府運動の抑止
②宇宙戦略への足がかり
である。
①の経緯は、簡単に説明すると以下の流れになる。(②は次で詳しく触れる)
- 2012年まで日本と中国が自分の領土だとお互いに出張
- 2012年に尖閣諸島を日本が国有化
- 中国で半日デモが起き、日本製品不買運動が起きた
- スマホやパソコンの重要な部品である半導体の多くが日本製だと中国国民が気づく
- 日本製品不買といってもスマホは捨てられない
- 最終的には「半導体を作る技術もない国に追いやった」と不満が政府に向く
- 2013年に製造強国戦略研究に着手し、「2025」の発表に至る
ハイテク戦略にいたる原因が日本人としては「なんともいえない」感じだ。そもそもいきなり勝手に中国が尖閣諸島は「自分のモノだ」と言い出し、尖閣諸島に勝手に船をだし、トラブルを続出させたから、日本が正式に国有化したという流れが、まさかこういう展開になるとは。ただ、それでも中国のハイテク企業の成長はめざましく、世界の半導体企業のトップ10に2社入っているまでである。身近な例でいえばファーウェイだろう。携帯ショップにいけばファーウェイ製のスマホを見かけるだろう。中国の国家戦略がどれだけ強力なものか実感できるのはないだろうか。
「中国製造2025」の戦略2:宇宙戦略「一対一路一天一空」
次に「2025」の宇宙戦略「一対一路一天一空」とはどういうものなのか。要約すると著者はこう述べる。
これは私の持論だが、中国はこれから伸びるであろう宇宙ビジネスに対して、これから成長していく多くの発展途上国に投資する形で人工衛星を打ち上げ、インフラを牛耳ろうとしているのだと思う。暗号を制するというのは戦争的な意味合いが強いのだろうが、世界の中で国の発言権や影響力を強めるという意味合いがあるのだろう。
まとめ
著者はこの2つの戦略がアメリカを脅かすものであり、だからこそアメリカは米中貿易戦争を起こしたと言っている。そして、中国はハイテクと宇宙により世界を制覇しようとしており、言論を弾圧するような中国が世界を制したら、どのような明日が待っているかと、危険性を語っている。
なお、全部で5章からなる内容は「2025」にかかわる詳細は詰め込まれており、かなり読み応えのある内容となっている。興味を持っていただいた方は、ぜひ読んでいただければ幸いだ。