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HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント 書評

本の情報

タイトル:HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント
著者:アンドリュー・S・グローブ (著)、小林 薫 (翻訳)
出版:日経BP社 単行本  2017/1/11

336ページ

 

どんな本か一言まとめ

 マネージャーのアウトプットとは何か、アウトプットを増やすためにはどうすればよいのか

 

おすすめする読者

  • 管理職
  • 管理職候補

  

本のポイント

  • マネージャーのアウトプットとはなにか
  • アウトプットを増やすためにテコ作用がいかに働いているか
  •  マネージャーの重要な仕事は、部下から最高の業績を引き出すこと

 

解説と感想

マネージャーのアウトプットとはなにか

著者は、マネージャー(管理職)のアウトプット(成果)を、「自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ他の組織のアウトプット」と簡単な式で表しています。

 

非常にシンプルです。簡単な足し算で表現できることがまた素晴らしいと思います。また、活動や経緯を全く表していません。逆に言えば、曖昧さが全くなく、言い訳ができない非常に厳しい表現でもあると思います。「〇〇とはなにか」という意味付けだけでなく、仕事の報告や議論をする場合も、難しいテーマであればあるほど、長々と分かるような分からないような話や説明になってしまうことがあるかと思います。それは、曖昧さの余白を作って責任から逃れやすくしているのかもしれません。いずれにせよ、この難しいテーマを短くシンプルに言い切る凄さをまざまざと感じさせられます。

 

アウトプットを増やすためにテコ作用がいかに働いているか

マネージャーはただでさえ忙しく、仕事の取捨選択が必要です。そこで、アウトプットを増やすためには、アウトプットを増やす効果が高い仕事や活動に集中し、テコ作用を働かせること(掛け算の考え方)が重要だと述べています。

 

これもシンプルです。「やったほうがよくなる」という単純な足し算はイメージしやすいと思いますが、「これをやることで、どれだけの数の人と時間と効果に影響を与えるか」という掛け算の考え方は、普段からやっていないと簡単には思い浮かばないかもしれません。また、取捨選択や集中というのは、何をやるかという考え方も大事ですが、何をやらないか、任せるかという逆の考え方も大事だと思います。テコ作用が高い仕事というのは、数が少なく、時間やエネルギーが必要な仕事のはずです。つまり、テコの作用が高くない、または逆の作用が働く仕事がほとんどであり、大多数を占めるのだと思います。この話だけでなく、表と裏の2つの視点で考えることは、視野も広がり、重要だと私は思います。

 

マネージャーの重要な仕事は、部下から最高の業績を引き出すこと

 今まで扱った「マネージャーのアウトプット」を「テコの作用で増やす」ことの具体例は「部下から最高の業績を引き出すこと」であり、その方法は「動機づけ(モチベーションアップ)」と「訓練」だと述べています。

 

「動機付け」

まず「動機づけ」ですが、「マズローの欲求階層説」に従うと述べています。

欲求は下記の順番でピラミッド層になっており、下から上へ欲求が移ります。一度満たされた欲求は、再び欲求となることはありません。自己実現の欲求が満たされると、新たな自己実現の欲求が生まれます。(自己実現を繰り返す)

 

  1. 自己実現:自分はこうなりたいという欲求
  2. 尊敬・承認:他人から尊敬されたい、認めてもらいたいという欲求
  3. 親和・帰属:自分と共通点のあるグループに入って受け入れられたいという欲求
  4. 安全・安定:安心、安定した暮らしへの欲求
  5. 生理的:生きていく本能

 

興味深いですね。これは少し乱暴なイメージですが、一定以上の給料が出ていて、仲間と溶け込んでもらい、認めてあげれば、自己実現を繰り返して高いモチベーションを維持してくれるということでしょうか。確かに、不満や愚痴があって仕事の全力で取り組めないときや、退職してしまう人などは、2から4の欲求に問題があるのかもしれません。

 

「訓練」

次に、「訓練」については、部下のタスク(仕事や能力)習熟度に応じて、以下のようにまとめています。

  • 低:明確な構造(仕組み)、タスク志向 → 何を、いつ、どうしてを教える
  • 中:個人志向 → 双方向通行的コミュニケーション、支持、お互いの判断力を重視する
  • 高:マネージャーの関与を最小限に → 目標を設定し、モニターする

 

また、「訓練」はマネージャーの仕事であり、他社の教育訓練は効果が薄く任せるものではないと著者は断言しています。 そして、教えることがいかに大変であり、教える側が一番学ぶことになり、部下が教えたことをきちんとこなしていることを見た時の嬉しさに勝るものはないという言葉で締めくくっています。

 

これもシンプルで、非常に厳しい内容だと思います。仕事を本当の意味で理解していないと人に教えることはできません。ですが、仕事のすべてをそこまで理解している人はなかなかいないでしょう。ということは、マネージャーは部下が必要だと思う仕事や能力を、教えられるよう自分自身が仕事を理解し、高い能力を持っていなければならないと言っているように思えます。

 

まとめ

基本をとことん極めれば、他者には簡単には真似できない価値となるという言葉を聞いたことがあります。それを痛感させられた内容でした。今回取り上げられなかった説明や手法がありますが、それらも全てシンプルです。しかし、それを仕事でしっかりやってみろと言われると難しいような内容です。テコの作用が働くモノとは、実は基本的なことばかりなのかもしれません。