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年収1億円になる人の習慣 書評

本の情報

タイトル:年収1億円になる人の習慣
著者:山下 誠司
出版:ダイヤモンド社

他:単行本(ソフトカバー) 2018/8/23発売 220ページ

 

どんな本か一言まとめ

年収1億円となるために、習慣とすべき大事な考え方や行動を、自分の経験談から教えてくれる本

 

おすすめする読者

  • 年収1億円を目指したいと思っている若者
  • さらに年収を上げたいと思っている人

  

本のポイント

  • 早起きが年収アップの基本中の基本
  • スピードと量
  • 3つの約束「逃げない、言い訳をしない、人のせいにしない」

 

解説と感想

早起きが年収アップの基本中の基本

 

早起きをすると年収が上がる6つの経験則を著者は述べている。

 

  1. 目的意識が明確になる
  2. 朝の1時間で昼の4時間分の仕事ができる
  3. 「優越感」や「勝った感」が自信につながる
  4. 理性的に考えられる
  5. 2時間前出社となり、2時間残業より10倍高い評価がもらえる
  6. 仕事が好きになる

そしてなにより、早起きにより「時間を生み出し、1日を自分でつくっている」という、前向きな気持ちになると述べている。そして始業までに1日で一番大切な仕事を終わらせ、その日はゆとりと余裕をもって仕事をこなすことができる。と締めくくっている。

 

「習慣」とは一番強い言葉だと私は思っている。習慣とは自分が決めたルールを、最終的には頭で考えなくとも、無意識に体が実行することだと私は思っている。当然、良い習慣が最強で、悪い習慣が最悪となる。なお、著者は一番早くて深夜3時前に出社していた時期がある。「一番」にこだわった結果だろう。

早起きなんてしたほうがいいと誰もが思うだろうが、ここにも「習慣」の凄みが出る。夜遅くまで残業した翌日や飲み会の翌日に、「今日くらいいいや」と妥協せず、何年も欠かさず早起きをする。言うのは簡単だが、実行し続けるのはなかなかできるものではない。

  

スピードと量

著者は質ではなく、スピードと量が重要だと述べている。具体的には下記の通りだ。

  • 仕事は質よりもスピード。フライングならなおよし
  • 期限を決めて量をこなしてこそ、圧倒的な質が手に入る

 

著者にはこんな経験があった。とある会社が商品開発をともに行う企業を選ぶために、複数の企業に説明会を行い、1週間後に企画書を提出してもらうことになっていた。すると1時間後に企画書を送った会社があり、そのままその会社と商品開発を行うことに即決した。決めた理由を「スピードの速さは本気度と情熱のあらわれであり、間違いなく良い仕事をしてくれる」とのことだった。

また、量を増やす努力をすると、ある時期から「量が質へと転化する」ようになる。つまり量が質を生む。と著者は述べている。また、「完璧主義」ではなく「最善主義」(限られた時間で最大の結果を出す考え方)で仕事を行うこと。求められた期限の数日前に仕事を終わらせること。つまり、優先順位は「期限」「量」「質」であり、期限付きの量こそが究極の質を生むと締めくくっている。

 

期限よりも早めに仕事を終わらせるという考え方は、先に述べた「スピード」の部分とも重なってくる。これも誰もがわかる基本的なことであるが、これを習慣として常に実行できることの重要性がよく伝わる内容になっていると思う。

 

また、以前のブログでも紹介した「死ぬこと以外かすり傷」という本でも「スピードと量」の重要性を著者は説いている。こちらの本にも興味を持っていただければ幸いだ。

 

死ぬこと以外かすり傷 書評 - ビジネス本の書評ブログ

 

3つの約束「逃げない、言い訳をしない、人のせいにしない」

無気力で愚痴ばかりこぼしている人のそばにいると、まわりも気が滅入ってきてやる気を失う。強い邪念を放つ(そういったことを強く言う)人に引っ張られて、まわりを愚痴を言うようになる。そして、その強い邪念を放つ人が、当時その組織で一番偉かった著者であったと、まわりから指摘されたことがあると述べている。それに気づいてから、「逃げない、言い訳をしない、人のせいにしない」をルールにしたところ、3週間後には「愚痴・悪口・文句」が減り、3か月後には強い邪念を放つ人がいなくなったという。

 

これも大事なことだが、多くの人が出来ていないのではないだろうか。私はこれに「陰口」も含まれると思う。陰口はいつかどのような形であれ本人に伝わると私は思っているし、当然まわりの士気を下げる。また、典型的な愚痴大会の飲み会は「時間、お金、体も心も」なにひとつ良いことはなく、なにも生み出さないものだと私は思っている。「言霊」という言葉があるが、例え良くないことを思っていたとしても、言う言わないの差はとても大きいものであり、習慣にすることの価値が大きいと、共感できる。

まとめ

誰もがわかっている基本的なことばかりであり、そもそも学校や入社後に学ぶような内容だ。だが、基本的なことがいかに重要で、いかに実践できている人が少なく、だからこそ高い成果が出るのだと、改めて気づかせてくれる内容であった。

また、こんな基本的なことを実践するだけで年収1億円になればラッキーだな、とすぐに実践してみようと気軽に考え、実行してみるという考え方もよいのかもしれない。

死ぬこと以外かすり傷 書評

本の情報

タイトル:死ぬこと以外かすり傷
著者:箕輪 厚介
出版:マガジンハウス

他:単行本(ソフトカバー) 2018/8/28発売 173ページ

 

どんな本か一言まとめ

 自分の好きなものに、情熱を持ち、ひたすら入れ込み、熱狂し、偏愛で動け。それを圧倒的なアツさと強い言葉で読み手の心を打ちぬいてくる本。

 

おすすめする読者

  • 人生、日本、会社、仕事、学校、勉強が「ツマラナイ」と少しでも感じている全ての人

  

本のポイント

  • こっちの世界に来て、革命を起こそう
  • 何か一つでトップになれ、今やれ、スピードと量、数字から逃げるな

 

解説と感想

こっちの世界に来て、革命を起こそう

これは「はじめに」の冒頭の扉で表現している内容だ。

 

今、若者はチャンスだ。

これまでのルールとシステムが通用しなくなっている。

古い世代にはわけのわからない変化が今まさに起こり始めている。

ワクワクする未来の迫っている。この波に乗ろう。

自分たちの手で、世界の輪郭に触れ、自由で新しい秩序を作り直そう。

おっさんの言うことはすべて聞かなくていい。

その代わり、誰よりも動け。

語る前に手を動かせ。語りながらでもいいから手を動かせ。

能書きじゃなく数字はプロジェクトで示せ。

何をやりたいか、何をやっているか、明確に答えられる人間であれ。

狂え、生半可な人間が何も成し遂げられないのは、いつの時代も変わらない。

絶望を感じながら、それでも信じて走り抜け。

守るより、攻めろ。その方がきっと楽しい。

こっちの世界に来て、革命を起こそう。

 

 

この内容がこの本の全てを表していると思う。この扉で引き込まれ、この後の「はじめに」で私は心臓を鷲掴みにされたような気持ちになった。圧倒的なアツさのエネルギー。

会社も、仕事も、自分も、可能性も、閉塞感も、日本の今も未来も、「こんなものだろ、仕方ない」という考えは自分のすべて言い訳であって、自分が本当の意味で頑張っていないだけだと猛烈に言われたようだった。

「著者だからできたんでしょ?」「そんなことわかってる。でも難しい」と思うだろう。悔しいが私もそう思う部分はある。失礼だと思うが、世の中の95%くらいの人は、きっとここまで「やっていない」。やったほうがいいと思ったりわかったりしていも、「やっていない」。この差がものすごい高くて厚い壁なんだろうと思う。

そう、つまり「死ぬこと以外かすり傷」なのだから「いいからやれ」と、それに尽きることを著者は伝えたいのだと思う。

  

何か一つでトップになれ、今やれ、スピードと量、数字から逃げるな

「はじめに」の扉で「やりたいこと」に「狂え」とあった。その「狂え」とは、このテーマである通り、

  • 何か一つでトップになれ
  • 今やれ(”やりたい”じゃなく、”やります”)
  • スピードと量(本書では”スピードスピードスピード!”、”量量量!”と記している)
  • 数字から逃げるな(好きなことをやるは重要。それに加えて金を稼げと記している)

 

とてつもなく正論で残酷な言葉だと思う。私は読んでいて恐ろしさすら感じ、身震いした。ここまで頑張らないといけないのかと。そして、こんなにも仕事に、人生に私は打ち込んでいないのかと虚しさも同時に感じた。だが、これほどまでに打ち込んでやりこむことで見えてくる世界があるから、「こっちの世界に来い」と著者は言うことができるのだろう。

 

 

まとめ

本書では著者のとんでもないエピソードにあふれているが、それを真似するのではなく、真似できないからダメだということでもなく、自分のできることを「今からやる」が一番重要なのだと思う。そして同時に「こんなもんでいいや」をやめること。この本は、「こういう風にやればいい」という小手先のテクニックではなく、「熱量や覚悟」に火をつけ、大きく燃やしてくれる本だと思う。

サブスクリプション 「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル 書評

本の情報

タイトル:サブスクリプション 「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル
著者:ティエン・ツォ、 ゲイブ・ワイザート (著)、 桑野 順一郎 (監修、 翻訳)、他
出版:ダイヤモンド社  単行本(ソフトカバー) – 2018/10/25

360ページ

 

本のポイント

  • サブスクとはなにか
  • 企業はこれからどう変化するか

 

おすすめする読者

  • 会社員(売る側の立場)
  • 消費者(利用する立場)

 

解説と感想

サブスクとはなにか

サブスクとは簡単にまとめると「顧客が求めるサービスを、定期的な支払いで継続的に提供するサービス」のことです。

著者は、”ビジネスは歴史の転換点を迎え、世界の中心は製品からサービスへ移行しつつあり、消費者の関心が所有から利用へと加速度的に移行している。” と述べています。

また、企業側であれば、”収益の80%をサブスクで得ている1000万ドル企業であれば、常に800万ドルの売上が約束された状態で新年度をスタートすることができる” とも言っています。

 

サブスクの事例

では次にわかりやすい例を本書よりピックアップします。

 

フェンダー

テーマ:ギターの販売からミュージシャンの育成へ

サブスク:ギター初心者が最初の曲を30分程度でマスターできるよう指導する定額利用のオンライン教育動画サービスを開始

経緯:業界全体の売上が減少傾向、フェンダーの売上の約半分は初心者だが、初心者の90%が1年以内にギターをやめてしまう

 

ダゾーン

テーマ:視聴機会に恵まれない市場への配信(日本には実はNBAアメリカのバスケットボール)のファンが多くいるが、なかなか見ることができない)

サブスク:年間8000以上のスポーツイベントを月額20ドル(約2000円)で視聴できる

 

ポルシェ

サブスク:6つの車種から選択でき、メンテナンス・保険・車両税・登録料を含めて月額2000ドル(約20万円)から利用できる。他の車種に乗りたければ、アプリを使って簡単に車種を変えることができる。

 *リースとの違い:リースは気軽に車種を変えられない、リースは自分で保険に入る必要がある、リースは比較的長い期間の契約だが、サブスクは月ごとの契約となる等

 

 

他にも様々な実際のサービスがありますが、サブスクがどういうものかがわかっていただけたかと思います。

これは利用する側の消費者で考えると、夢が広がるサービスですね。

サブスクについては私は以下の点が良いと思っています。

  • 気軽にサービスを始められる(やめられる)
  • 定額制(毎月決まった金額など)
  • 所有しなくてよい
  • 業界やジャンルを問わず、何にでもサブスクのサービスが生まれる
  • 一人ひとりにあったサービスと値段を選べる

 

私はプロ野球が好きなので、あるチームの試合だけしか見られない代わりに料金を抑えるというサービスがほしいですね。シーズン中のみスカパーを契約していますが、おそらく放映権の都合で、「プロ野球を放送するチャンネルをすべて契約する」というサービスなんですね。新たなサービスを期待したいです。

 

企業はこれからどう変化するか

著者は、”製品中心から顧客中心にビジネスを変え、(中略)全体としての企業の機能も変わることになる”と述べています。

 

今までは「たくさんの人に売れる製品を売るためにどうするか」というビジネスから、「一人ひとり違った内容を求めるサービスを売るためにどうするか」という真逆の考え方になるのだと思います。私は以下の内容について企業側は大きく変わらなければならないと思います。

 

  • 顧客が求めていることは何かをもっと知らなければならない
  • サブスクは組み合わせにより、どのようなサービスも提供できる。それは異なる考え方、異なる部署、他の会社、異なる業界などもっと視野を広げなければならない
  • サブスクは提供しているサービスをすぐにでも変えられる。サービスをよりよくするためにはどうするか日々考え、スピーディーに改善しなければならない。

 

考え方が真逆だと言いましたが、求められる変化は相当大きく厳しいものになると思います。企業のこれからを左右することになるかもしれません。

 

まとめ

私たち消費者にとっては、これからどんな良いサービスが生まれるか期待が膨らむ中、逆に企業にとっては厳しく大きな変化を求められることになるかもしれません。しかし、前向きに考えれば大きなチャンスだと捉えることもできます。これからますますサブスクからは目が離せなくなりそうです。

また、ここでは紹介しきれなかった内容がたくさんありますので、少しでも気になった方はこの本をぜひお読みいただければと思います。

HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント 書評

本の情報

タイトル:HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント
著者:アンドリュー・S・グローブ (著)、小林 薫 (翻訳)
出版:日経BP社 単行本  2017/1/11

336ページ

 

どんな本か一言まとめ

 マネージャーのアウトプットとは何か、アウトプットを増やすためにはどうすればよいのか

 

おすすめする読者

  • 管理職
  • 管理職候補

  

本のポイント

  • マネージャーのアウトプットとはなにか
  • アウトプットを増やすためにテコ作用がいかに働いているか
  •  マネージャーの重要な仕事は、部下から最高の業績を引き出すこと

 

解説と感想

マネージャーのアウトプットとはなにか

著者は、マネージャー(管理職)のアウトプット(成果)を、「自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ他の組織のアウトプット」と簡単な式で表しています。

 

非常にシンプルです。簡単な足し算で表現できることがまた素晴らしいと思います。また、活動や経緯を全く表していません。逆に言えば、曖昧さが全くなく、言い訳ができない非常に厳しい表現でもあると思います。「〇〇とはなにか」という意味付けだけでなく、仕事の報告や議論をする場合も、難しいテーマであればあるほど、長々と分かるような分からないような話や説明になってしまうことがあるかと思います。それは、曖昧さの余白を作って責任から逃れやすくしているのかもしれません。いずれにせよ、この難しいテーマを短くシンプルに言い切る凄さをまざまざと感じさせられます。

 

アウトプットを増やすためにテコ作用がいかに働いているか

マネージャーはただでさえ忙しく、仕事の取捨選択が必要です。そこで、アウトプットを増やすためには、アウトプットを増やす効果が高い仕事や活動に集中し、テコ作用を働かせること(掛け算の考え方)が重要だと述べています。

 

これもシンプルです。「やったほうがよくなる」という単純な足し算はイメージしやすいと思いますが、「これをやることで、どれだけの数の人と時間と効果に影響を与えるか」という掛け算の考え方は、普段からやっていないと簡単には思い浮かばないかもしれません。また、取捨選択や集中というのは、何をやるかという考え方も大事ですが、何をやらないか、任せるかという逆の考え方も大事だと思います。テコ作用が高い仕事というのは、数が少なく、時間やエネルギーが必要な仕事のはずです。つまり、テコの作用が高くない、または逆の作用が働く仕事がほとんどであり、大多数を占めるのだと思います。この話だけでなく、表と裏の2つの視点で考えることは、視野も広がり、重要だと私は思います。

 

マネージャーの重要な仕事は、部下から最高の業績を引き出すこと

 今まで扱った「マネージャーのアウトプット」を「テコの作用で増やす」ことの具体例は「部下から最高の業績を引き出すこと」であり、その方法は「動機づけ(モチベーションアップ)」と「訓練」だと述べています。

 

「動機付け」

まず「動機づけ」ですが、「マズローの欲求階層説」に従うと述べています。

欲求は下記の順番でピラミッド層になっており、下から上へ欲求が移ります。一度満たされた欲求は、再び欲求となることはありません。自己実現の欲求が満たされると、新たな自己実現の欲求が生まれます。(自己実現を繰り返す)

 

  1. 自己実現:自分はこうなりたいという欲求
  2. 尊敬・承認:他人から尊敬されたい、認めてもらいたいという欲求
  3. 親和・帰属:自分と共通点のあるグループに入って受け入れられたいという欲求
  4. 安全・安定:安心、安定した暮らしへの欲求
  5. 生理的:生きていく本能

 

興味深いですね。これは少し乱暴なイメージですが、一定以上の給料が出ていて、仲間と溶け込んでもらい、認めてあげれば、自己実現を繰り返して高いモチベーションを維持してくれるということでしょうか。確かに、不満や愚痴があって仕事の全力で取り組めないときや、退職してしまう人などは、2から4の欲求に問題があるのかもしれません。

 

「訓練」

次に、「訓練」については、部下のタスク(仕事や能力)習熟度に応じて、以下のようにまとめています。

  • 低:明確な構造(仕組み)、タスク志向 → 何を、いつ、どうしてを教える
  • 中:個人志向 → 双方向通行的コミュニケーション、支持、お互いの判断力を重視する
  • 高:マネージャーの関与を最小限に → 目標を設定し、モニターする

 

また、「訓練」はマネージャーの仕事であり、他社の教育訓練は効果が薄く任せるものではないと著者は断言しています。 そして、教えることがいかに大変であり、教える側が一番学ぶことになり、部下が教えたことをきちんとこなしていることを見た時の嬉しさに勝るものはないという言葉で締めくくっています。

 

これもシンプルで、非常に厳しい内容だと思います。仕事を本当の意味で理解していないと人に教えることはできません。ですが、仕事のすべてをそこまで理解している人はなかなかいないでしょう。ということは、マネージャーは部下が必要だと思う仕事や能力を、教えられるよう自分自身が仕事を理解し、高い能力を持っていなければならないと言っているように思えます。

 

まとめ

基本をとことん極めれば、他者には簡単には真似できない価値となるという言葉を聞いたことがあります。それを痛感させられた内容でした。今回取り上げられなかった説明や手法がありますが、それらも全てシンプルです。しかし、それを仕事でしっかりやってみろと言われると難しいような内容です。テコの作用が働くモノとは、実は基本的なことばかりなのかもしれません。

天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ 書評

本の情報

タイトル:天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ
著者:北野 唯我
出版:日本経済新聞出版社 単行本(ソフトカバー) – 2019/1/17

272ページ

 

どんな本か一言まとめ

 「天才」「秀才」「凡人」とはなにか、なぜ天才が殺されるか

 

おすすめする読者

  • 20~30代の社会人
  • 中学生、高校生、大学生

 

本のポイント

  • 天才・秀才・凡人とはなにか
  • 天才が殺される理由
  • それぞれの人の中に天才がいる

 

解説と感想

天才・秀才・凡人とはなにか

著者は、人間は以下の3タイプがいるといっています。

 1.天才:「創造性」

  • 独創的な考えや着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる。
  • 秀才に興味がなく、凡人に本当は理解してほしい気持ちがある
  • 数はかなり少ない

2.秀才:「再現性」

  • 論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人
  • 天才に妬みと憧れを持ち、凡人を心の中で見下している
  • 数は少ない

3.凡人:「共感性」

  • 感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人
  • 天才を理解できないから排斥し、秀才を天才だと勘違いしている
  • 数はかなり多い

 それぞれのタイプは基本的にはお互いの価値観や世界観を理解・共有することができない

 

 会社や学校のまわりの人たちを思い浮かべると、特徴も数もなんとなくわかるような気がしますね。

 本書の主人公は凡人ですが、ある天才の社長に惚れ込んで、社長とともに創業から立ち上げたメンバーという設定ですが、私はそこまで惚れ込んだ天才とは出会ったことはありません。それほど数が少ないということでしょう。考えてみれば当たり前ですが。

 そして、秀才は数人思い浮かびます。数には納得です。

 最後の凡人は、空気を読みながら生きる、天才・秀才以外の人間というイメージなのかなと思います。天才や秀才と比べるとなんとなく私自身はイメージしにくいですが、大多数の人はそうでであることはわかります。

 

天才が殺される理由

 天才を理解できずに排斥(受け入れられずに拒むこと)する凡人と、天才への妬みが強い秀才が、天才を殺すと著者は述べています。また、天才への憧れが強い秀才は天才の右腕となるが、妬みが強いと最大の敵になるとも言っています。そして殺された天才は凡人となってしまうことが多いそうです。

 これもイメージがつきやすいというか、実際にそのような体験を私自身もしていると思います。学校でも会社でも。人間の性質なのでしょうね。

 天才も人間ですから、最大の敵である秀才か、大多数の凡人から拒まれれば、自分はおかしいのかなと思ってしまいますよね。殺されて組織に残るか、組織を去るかのどちらかになってしまうのでしょうね。本当に悲しいことです。

 以上のことが「大企業でイノベーションが起きない理由」だとも著者は言っています。

イノベーションとは、簡単に言うと「新しい良いモノや仕組み、そしてそれを創りだすこと」です。

 

それぞれの人の中に天才がいる

 

「天才」「秀才」「凡人」のタイプに分かれるが、全ての人がそれぞれをあわせもっている。だれもが天才の部分を多かれ少なかれ持っているが、同じくあわせもっている秀才と凡人の部分が、知らず知らずのうちに天才に蓋をして、自分の可能性を閉じ込めている。それは特に学校がそうであり、先生でさえ善意の行動で天才を殺していると述べています。

 

 学校では他の人と違う変な部分は恥ずかしかったり、いじめられるのではないかと怖くなったりしたことは私にもありますし、ほとんどの人が経験したことがあるのではないでしょうか。何より、無意識に自分には天才の部分がないと思い込んでることがもったいないと感じます。「創造性」って難しい、とてもすごいことのような言葉ですが、たぶんそうではなくて、「こんなことがあったら面白いな、こんなことをやってみたら面白いんじゃないか」っていうのが創造性であって、自分にしかない天才の部分なのかもしれません。そう考えるとちょっとだけ前に進めそうな、進んでみようと思えるかもしれません。

 

 

まとめ

 「天才」「秀才」「凡人」という考え方で自分を含めた人間に対して新しい考え方や気づきを与えてくれる本だと思います。「本のポイント」には挙げていませんが、印象的だった表現が2つありました。それは登場人物の天才が「最大のアートは宇宙だ。価値観はすべて相対的だと気づける」というシーンと、「革新的なイノベーションは、天才の飽きに近い感情から生まれる」という言葉です。こういう本筋から外れたようなところに、著者の人柄・技術・伝えたいことが表れているように気がします。

良い本と出合えました。みなさんも是非読んでみてはいかがでしょうか。